今回のブログでは、憲法改正に関する松本いずみの考えを述べたいと思います。まずは、憲法9条改正の必要性についてです。

自民党は、平成30年(2018年)3月に、いわゆる「改憲4項目」の議論の方向性と条文イメージを公表しました。そのうちの一つである「自衛隊の明記」については、現行の日本国憲法第9条を維持した上で新たに第9条の2を設けることとし、日本が自衛権を有することを確認的に明記するとともに、内閣総理大臣を最高の指揮監督者とする自衛隊を保持することを明文化する案を示しています(自由民主党「憲法改正に関する議論の状況について」(平成30年3月26日))。

どうして現行の憲法第9条だけでは足りず、新たに第9条の2を設けることが必要なのか。松本いずみは、ここには大きく二つの理由があると考えています。

第一に、現在、政府は、自衛のための必要最小限度の「武力の行使」は憲法上許容されるという見解をとっています。ここには、現行憲法下において「自衛隊違憲論」が存在することを踏まえた上で、慎重に論理を積み重ねてきた歴史があります。しかし、政府解釈によって自衛隊や自衛のための措置の合憲論を導くことには、一定の法的不安定性が存在すること自体は否定できません。中国、ロシア、北朝鮮の脅威により、一層厳しさを増す現在の我が国を巡る安全保障環境を踏まえると、新しい自衛のための措置を講じる度に合憲か違憲かの大議論をしている余裕はなくなってきています。そのため、新たに第9条の2を設けて、こうした法的不安定性を解消する必要があると考えています。

第二に、憲法上、自衛隊の存在を正面から認めることで、自衛隊に憲法上の規律を適用することを可能にするためです。日本の歴史を振り返ってみますと、「制度上は存在しないはずの存在」が事実上大きな権力を有していたことにより、そうした存在に対するコントロールを加えることが難しかった事実が多いことに気づかされます。例えば、藤原家や豊臣秀吉などが担った官職である「関白」や、源頼朝や徳川家康などが担った「征夷大将軍」は、本来は律令制に存在しないはずの官職でした。そのため、その全体の位置づけや権限はその時々の人間関係によって左右されることとなってしまい、何らかの法的な統制を加えることが難しい側面がありました。明治憲法下における「元老」も基本的に同じであったと言えます。

こうした、「制度上は存在しないはずの存在」という、いわゆる「令外官(りょうげのかん)」については、法制度上、その存在が明記されていないことから、当然ながらその位置づけや権限についても法的に明確化することができません。そして、現行憲法下における自衛隊にもある意味で同じ側面があると言えます。もちろん、自衛隊法があることは事実なのですが、前述のように憲法上の位置づけが曖昧であるため、自衛隊に対するコントロール(例えば、内閣総理大臣の最高指揮権や国会の事前承認の原則、文民統制の原則など)を憲法に明記することもできず、法律を改正すればこれらの統制が緩められてしまう恐れが常に存在しているのです。

したがって、松本いずみは、憲法上、自衛隊の存在を正面から認めることで、自衛隊に対する憲法上のコントロールを加えることを可能にしていくことが必要だと考えています。いわば国民主権の下に自衛隊が置かれることを憲法上明確にすることで、予算や規模が大きくなる自衛隊をより安全な存在にしていくことが必要なのです。

なお、今回の第9条の2の新設によって、憲法9条を巡る問題が全て解決するわけではありません。例えば、現在の自民党案では、自衛隊に対する統制は「国会の承認その他の統制に服する」ものとされており、「その他の統制」の中身を憲法に明記する必要はないかや、有事における自衛隊の行動が通常の刑法などに服するものとしてよいのか、といった追加で検討すべき事項がいくつもあります。それでも、今回の第9条の2の新設という自民党案は、憲法第9条を巡る議論を前に進めるために必要となる重要な第一歩であり、松本いずみは、まずはこの案をたたき台にして、各党が真摯に議論を行っていくことが、この国の将来のために望ましいと考えています。